【新唐人2013年12月23日付ニュース】チベット高原を水源地とする長江は、中国およびアジアで最も長い河川です。三峡ダムの完成後、長江流域で進められている大規模プロジェクトは「南水北調」プロジェクトです。近日、中国の専門家は、三峡ダムと南水北調プロジェクトは長江流域の生態環境を著しく破壊し、長江では深刻な水不足とともに、魚が絶滅の危機に直面していると指摘しました。
中国当局が5千億元を投入した「南水北調」プロジェクトは、長江流域最大規模の水利プロジェクトです。その規模と難度は三峡ダムプロジェクトをも超えると言われています。しかし、専門家は当局が大金を投じたこのプロジェクトが、長江流域の生態環境に破滅的な災難をもたらすだろうと考えています。
「南水北調プロジェクト」は、長江流域の水資源の一部を中国北部と西部に送り、北部の水不足を解決する構想で、東線、中央線、西線の3つのルートに分かれます。
中国メデイア「瞭望東方週刊」は先日、三峡ダム、南水北調プロジェクトの影響で、長江にはもう捕れる魚がないと報道。文章では中国で最も権威のある長江生態環境専門家・曹文宣さんに対し、独占インタビューを行いました。
インタビューの中で曹さんは、長江の生態環境保護のために一連の努力を行ったものの、効果はほとんどないと述べています。例えば、国家一級重点保護野生動物、ヨウスコウカワイルカは絶滅の危機に直面し、シロチョウザメは10年前から姿が見えなくなっています。
長年三峡ダムプロジェクトに注目している環境保護活動家・戴晴さんは、三峡ダムの土砂流入問題が取沙汰されてから、土砂をせき止めるため、当局は長江の上流にダムを建て、同時に水もせき止めた結果、長江の水不足を招いたと指摘します。しかし、当局はこれらの事実を隠しているといいます。
環境保護活動家 戴晴氏
「大自然は全てを段取りしています。川の水がどこを流れ、そこにはどんな農業があるべきか。そこの人々はどのように暮らすのか。しかし 人類は小さな技術を掌握しては、さらなる利益を得るために自然を改造しようとするのです」
2001年、北京がオリンピックの開催権を獲得した際、北京の水供給を確保するため、当時の共産党トップ・江沢民は直ちに南水北調プロジェクトを許可し、翌年の2002年末に着工しました。
しかし、プロジェクトの進展は順調ではありませんでした。原因は、プロジェクトが持続可能な発展の基本原理に反し、移民の数も予想を遥かに超えていたのです。追加投資を何度も行っても工期はのばされる一方で、2008年の北京オリンピック開催時、南水北調プロジェクトによる恵みの水は、北京には届きませんでした。
環境保護活動家 戴晴氏
「南水北調は聞こえはいいですが、周知の通り、中央線の水不足は深刻です。水が全くないわけではないけど、中央線の水で、北京の水不足を解決するのは私から見れば、ほぼ不可能です」
曹さんはまた、南水北調の西線は長江上流の生態環境に及ぼす影響がさらに大きいと示しました。相対的に言うと、長江上流の生態系はさらに脆弱で、水源地域の生産や生活も影響を受けるので、慎重に対応する必要があるといいます。また、中央線のプロジェクトも影響が大きいと示しました。
南水北調プロジェクトが現在直面している最大の問題は、ずばり「水源地の水不足」です。水位が足りず、水供給と水流の要求を満足させることができません。
中国共産党中央政府と国務院が南水北調プロジェクトによる水不足問題に手を焼いている時、中国国家発展改革委員会は2011年7月、陝西省の「漢江の水を渭河(いが)に導入する」「引漢済渭(いんかんさいい)プロジェクト」を許可し、毎年15億立方メートルの水を導入する計画です。
曹さんは、「引漢済渭」プロジェクトは漢江の3分の1の水を北方に引くことを計画していますが、そうした場合中流・下流の水量が大幅に減少すると指摘。実際、漢江の水はすでにほとんどなくなっています。
ドイツ在住の水利専門家・王維洛(おう いらく)さんは、「南水北調プロジェクト」は長江の中流下流の環境に破滅的な災難をもたらすと考えます。例えば、東ルートの東線によって、長江の河口地域の土壌の塩類化(えんるいか)などの問題が発生し、中央線のプロジェクトは武漢、湖北などの地区に計り知れない損失をもたらします。
戴晴さんは、毛沢東の「人間は天に勝つ」といった理念が、中国各地に今のような深刻な自然災害をもたらし、これらの災害はすべて、人間自らが引き起こした結果であると指摘します。
新唐人テレビがお伝えしました。
http://www.ntdtv.com/xtr/b5/2013/12/20/atext1027864.html (中国語)
(翻訳/坂本 ナレーター/村上 映像編集/工)